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春の嵐

 見附橋トンネル_convert_20100321035331


 風の記憶。
 泣き叫ぶように風が吹くと、幼い頃の風の思い出がまとめてからだに押し寄せる。風の思い出というよりは、強く風が吹いた日の母の声とか家の明かりの暗かったこと、急いで締めたシャッターのガタガタいう音、ろうそくで過ごした夜のこと、風の止んだ翌朝の清々しい匂いと並んだ水の配給所でおばちゃんたちの頭がそろってぼさぼさだったこと。風そのものの記憶ではなく、強かった風がもたらしたもの寂しさと妙なおかしさと安心だ。
 強い雨や風になるとよく停電していたあの頃の、ろうそくの明かりで過ごした部屋の空気を覚えている。同じ広さの部屋なのに、ろうそくの明かり一つになると何故か広くなる感じがした。広い部屋の真ん中に、友だちと3人でまるくなって座っていた。家族5人で頭を寄せ合ってご飯を食べた。部屋は驚くほど広いのに、こんなに小さくまるまってみんなで寄せ集まって過ごす時間は内心楽しいものだった。だからパッと明かりがついてしまったりすると、楽しい夢は一瞬で終わってもういつもの狭い部屋がそこにあった。
 
 風の声は
 ぼうぼうごうごう
 びょうびょうがしゃん
 と なんとも言えず恐ろしい
 それなのに
 部屋の中では
 みんながひとつにまるまって
 いつもと違う場所がうまれた
 ろうそく一つの暗い部屋でも
 ぎゅっといっしょにいられたからか
 怖いのに安心できる
 不思議に楽しい時間だった
 嵐の後には
 必ず澄んだ空があるのを
 こどもながらに知っていたのか
 翌朝のおばちゃんたちの
 頭のカールがおもしろかったからなのか


 今夜も激しい風が吹く。今こうして書いている私のからだをかっさらうほど強い風だ。そんな夜中の私の部屋は、強い風でも明るいままだ。怖い気持ちに変わりはない。ろうそく一つにならずとも、今はもういつでもぎゅっといっしょにいられる。そして明朝、すべてを吹き散らした澄んだ空に会えるのも今ではよく知っている。吹き散らされたすべてがどれも、誰かにとってかけがえのないものであったとしても、澄んだ空を仰いで生きる厳しさが人々を美しく立たせるということも、今ではわかるようになったらしい。
 
 春の嵐
 明日はまた、美しいがうまれる日か
 咲くべき花が、自らを強くして
 ほんのわずかに開く日か
 新しい芽が 蕾が
 古いものから解き放たれる日
 春がいま
 冬と別れを告げている


明日は(もう今日ですね)、3回シリーズ最後の「よしみ先生の“Joyful リズムサークル”」
人数も増えて、楽しい時間になりそうです。

 

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市原よしみ

Author:市原よしみ
音楽家、作詞家
うた・・うたいます。
ことば・・書きます。
ゆめ・・描きます。
こえ・・聴きます。
みみ・・澄まします。
いろ・・しあわせですす。
こども・・あこがれです。
かみさま・・すべてです。
めぐみ・・感謝だけ。

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