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うきうき戯れる時間の中に

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 雪の匂いを感じるような冷たい雨が降り出したのは、母の部屋を出てすぐのこと。
 遠慮がちな小さな雨粒。
 走る車のフロントガラスを静かに濡らして、夜の町に呼びかけている。
 
 すぐそこだよ、もうすぐそこだよ。
 首をのばせば見えるくらいに。
 春がきてるよ。
 ぼくたちなんて、春とおいかけっこしてるんだから。
 かくれたり、わらったり、みつけたり、さわったり。
 いた!っておいかけられるけど、またがんばって走ってみるよ。
 ぼくはすきだよ。
 春とおいかけっこしてるとき。
 どうしてだろう、ずっとうきうきしちゃうんだもん。

 
 春がおいかけっこしはじめたから?
 つめたい雨のこんな日も、わたしは不思議にうきうきしている。
 終の住処と呼べばいいのか、新しい部屋への義母の引っ越し。
 心の居場所ができた母の、部屋の静けさ心の静けさ。
 手の届く範囲に並ぶ家財。
 最小限の音。
 最小限の物。
 最小限の声。
 「だけど色が描きたいの。」
 と言った顔に、わたしの心が思わず躍る。

 音のない、物のない、この静かな小さな部屋で、母は震える手で筆を握って
 いろいろな色を置いていく。
 白い紙一面に、たくさんの色を。
 その楽しさの美しいこと。
 その喜びの美しいこと。
 色と戯れる母すべての美しいこと。
 それを想って今夜は寝よう。

 母の部屋を出ると、春とおいかけっこする雨粒が、うきうきしながら降ってきた。
 わたしも思わずうきうき躍って、夜空に筆をふるってる。
 「暗い夜空にとりどりの色を散らして光らせたいの。」
 そう言って、こんな静かな一人の部屋で、色と遊んで過ごせるような、美しい老人になれるだろうか。

 落ち着いた生活は、こうしてうきうき戯れる時間の中にある。



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プロフィール

市原よしみ/大谷よしみ(惠美)

Author:市原よしみ/大谷よしみ(惠美)
こどもたちお母さんたちと音楽をしながら、ことばを紡いだり、ぼんやりしたり、夢中になったりしています。美しいものに心を奪われて「きれい〜〜」と感じるのがとても好きです。うっとりしながら喜んで過ごす毎日の中で、どんどん繋がる新しい出会いに感謝して、神様からの恵みを数え笑顔で歌っています♪

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